了
盂蘭盆に因んで。 望めども決して届かぬ遙かな彼岸への思いをこめて。 |
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時の流れはあらゆる物を奪い去ります。万物は流転する。この世に生きとし生けるものは皆この原則の中にある訳です。 しかし此処にこの世界の理から外れた存在があります。それこそ不死の蓬莱人。 無限の未来、時間を超える存在。でもそれは生き物として見れば、極めて異常な状態です。 共に生きた者は皆、先にこの世を去ってゆきます。彼女を知る人々はそのほとんどが過去にのみ在るのです。親も家族も、友人も、皆既にこの世には居ないのです。蓬莱人にはそうした悲しい過去が無限に積み重なっていくのです。 そんな事を考えると、再び人間との絆を持つ事を選択した藤原妹紅は、とても強い女性なのかもしれません。 一見、罪を負い、感情的で癇癪持ちな性格のようで、悲しみや苦しみを唯一人で乗り越える芯の強さを持っていたのでしょう。 改めて思い至れば、身近に同類が居り隔離された環境で暮らす月人たちに比べて、彼女の生きてきた環境はかなり劣悪だったと思われます。物理的にも、精神的にも。 いつの日か、巫女や魔女たち人間が、……そして慧音たち人外たちでさえもが妹紅を残して旅立っても、きっと彼女はその思い出を胸に強く生きてゆく事でしょう。 |
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