星に願いを

七夕の夜


一年に一夜と思へどたなばたの逢ひ見む秋の限なき哉

紀貫之







里の子供たち :――五色の短冊〜♪



上白沢慧音 :稗田の、そなたは何を願ったのかな?
稗田阿求 :ええー。年頃の乙女の願いなんて聞くもんじゃあないですよぉ。
:そう言う慧音さんは何を願ったんですか?
:ああ、手芸上達なんて百科事典みたいにつまらない答えをしないで下さいね。
上白沢慧音 :私か…。この穏やかな日々がずっと続くことかな。
稗田阿求 :う。何かやっぱりつまらないですね。
上白沢慧音 :まあそうだろうな。でもこの何気ない日常こそが大切なんだ。平穏な日々、皆で共有する時間、この一瞬一瞬こそが幸せなのだから。
稗田阿求 :……………。本当に。
:……皆と一緒のこの時間がずっと続けば良いのに。……私にはもう。
上白沢慧音 :稗田の……。
稗田阿求 :私の願いは、決して叶うことは無いのだもの。
:ほんの少しでも良い、たとえ一年でも。……いいえ、一日でもいい。もっとみんなと一緒に居たい。でも――。
上白沢慧音 :絶対に叶わない願いなんて無い。この幻想郷ではどんな事だってあり得るんだ。だから、前を向いて行こう。皆と一緒に。
稗田阿求 :慧音さん、ありがとう。たとえ嘘でも、嬉しいです。
:ふふふ。私は幸せ者ですね……。こんな仲間と同じ時を生きることができたのですから。
上白沢慧音 :嘘じゃないさ。それに、それは私の願いでもあるのだから。
:いや“私の”願いじゃない、皆の願いなんだからな。
:嗚呼、綺麗。煌めく星々の光が空一杯に…。
上白沢慧音 :きっと空の星たちが、遙かな時間と空間とを超えて私たちの未来を祝福してくれているのだよ。
里の子供たち :――金銀砂子〜♪





 七夕の頃に書いていたものです。このままお蔵入りさせようかとも考えましたが、更新頻度も低いしもったいないので季節外れですが掲載することとしました(更新日は11月27日)。

 絵の中の印影にある「乞巧奠(きこうでん)」とは、元々大陸由来の行事で、女性が針仕事などの上達を祈願するものです。これがわが国でお盆の仏教儀礼や祖霊崇拝と結びついて七夕となったと言われています。
 意味不明な会話付きになりました、実は流行に乗って台詞で「奇跡も、魔(以下略)」とか書こうかと思ったのですが、止めました。


反古入れへ

画帳へ

表紙へ戻る