建築探偵 神域流浪(壱)


 さて、建築探偵の第三回目なのですが………。対象は神主様の上海アリス幻樂団webサイトの中、ゲーム紹介部分などで使用されている洋館です。いや、こういうのは余り良くないのかも知れません。

 サイトも当然神主様の作品なので、その元ねた紹介くらいは許されるかと考えてはいるのですが。一般的にどうなんでしょう。
 とまれ、その洋館画像は履歴と東方プロジェクト紹介の頁のタイトル部分に使われています。この建築はいったい何なのかが今回のテーマです。           
    ※本家本元、大本山。神主さまのサイト







図1 北海道庁旧本庁舎






図2 北海道庁旧本庁舎(中央部)
 建物の一部が見えている訳ですが、平屋ではなく、比較的規模の大きな洋館であり、周囲には木々が植えられた庭(或いはそれに類する広い空間)が存在するということが解ります。

 それでは、細部の特徴について見てみましょう。主要部分は二階建てで、中央部分とおぼしき所には立ちの高いドームが設けられているようです。勾配のやや急な屋根には、窓と煙突が幾つも設けられています。色が分からないのですが、窓や煙突の形状から、おそらく木造ではなく、煉瓦造ではないかと思われます。
 建物の窓を見てみましょう。正面中央の凸部分も凹部分も窓は四つ(厳密には二つ+二つ)あります。また、それぞれの部分の屋根には屋根窓が一つづつ付いているようです。そして両翼および中央凸部の付け根付近の屋根には大きな煙突があるようです。そしてドームは平面形が八角形の角ドームと思われます。それからドーム正面にも小さな窓があるのが見えます。

 それではこれらの特徴に当てはまる建物は何かを考えてみたいと思います。
 ドームを持った洋館は少なくはないのですが(例えば東京上野の岩崎邸など)、今回は屋根の形状や正面突出部の平面形などから建物を特定する事ができました。
 屋根窓の形状や煙突の位置なども確認してみましたが、ほぼ間違いないと考えています。
 この洋館は、現在も威容を誇る札幌市の北海道庁旧本庁舎です(図1,図2)。

 北海道庁旧本庁舎は、北海道札幌市の中心部、北三条に現本庁舎と並んで建っています。「赤煉瓦」として親しまれた建物で、現在では道立文書館としても使用されています。
 ここに掲載したのは少し前に撮影した写真なので、丁度良い角度のもの無く、やや分かりにくいかもしれませんが、中央部のドームや屋根の形、窓や煙突の配置、周囲の状況などを比較して頂ければ、同じ建物であることが分かると思います。

 エフェクトを掛けたものも用意してみました(図3)。庁舎の後ろの現庁舎ビルとか写っていて画としては駄目な感じですが、雰囲気はより掴みやすいかと思います。




図3 北海道庁旧本庁舎(エフェクト)


 背景画像の建物の推測が終わりましたので、以下では北海道庁旧本庁舎の建築について簡単に述べようかと思います。

 北海道道庁旧本庁舎は、明治21年(西暦1888年)に建設された建物で、本格的な洋風建築を日本人が設計した最初期の例です。設計は北海道庁の土木課で、その中心となったのは平井晴ニ郎と言われています。煉瓦造二階建ての建物であり、デザイン様式は、ネオバロック様式のアメリカ風アレンジとされています。
 ネオバロック様式はフランスの地方邸宅などに見られるもので、19世紀に流行したリヴァイヴァル様式の一つです。この様式は壮麗さや壮大さを演出します。
 煉瓦は地元で生産されたものを用い、当時はまだ珍しかった蒸気暖房を採用しました。ただし、堂々たる外観の中心を成す八角ドームは、着工後に急遽追加されたもので、構造上の問題を生じた為に数年後には撤去されてしまいました。現在のドームは昭和43年(西暦1968年)に竣工当時の形に復原されたものです。
 建物自体も、明治42年(西暦1909年)の火災で煉瓦壁を残して内部を焼失しています。2年後に再建されましたが、元の姿を取り戻したのは、昭和43年新庁舎の建設に合わせての保存修復工事を行ってからでした。

 北海道庁旧本庁舎は、旧開拓使本庁跡と共に国指定の史跡になっています。現在は一般に公開されており、歴史資料を公開する記念室などもあります。
 札幌にはこの赤煉瓦の建物の他にも有名な時計台をはじめとする、近代の歴史的建築物が結構多く残されています。札幌を訪れることがありましたら、近代建築巡りをお薦めします。

 ●北海道道庁旧本庁舎 詳細データ

 設計:北海道庁土木課(平井晴ニ郎)
 起工:明治19(西暦1886)年7月
 竣工:明治21(西暦1888)年12月14日
 復原:昭和43(西暦1968)年
 施工:直営
 規模:地上2階地下1階(4,864u)
 構造:煉瓦造
 所在:札幌市中央区北3条西5丁目


追記
 そもそも書くべき内容なのか、迷いつつ書いていました。故に内容も少なくて申し訳ない。
 多分、東方ユーザーには常識なんでしょうね。
 もし、御指摘や御意見等が御座いましたら、掲示板かメールにて遠慮無くお寄せ下さい。
 何か問題がありましたら、即対応致します。

追記2
 指摘を受けて、誤植を修正しました。(2010.07)
 「平井晴次郎」(誤)→「平井晴二郎」(正)



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