妖怪螢 | 遙かなる神代より此の地にあり 紀に曰く 然れども彼の地に、 多に螢火なす光く神と 蠅聲す邪しき神と有り 復た、草木咸能く言語有り |
闇に蠢く光の蟲こと、リグル・ナイトバグです。 季節外れなんですが、まあ何となく。 寒さにも弱いはずですが、虫は苦手なんでまあいいや。 小学校の頃、学校で蛍を飼った(養殖?)ことがあります。幼虫は確かに大変キモイです。 蛍には色々な伝承があります。それぞれ追って行くと面白いです。 詞書きをどうしようか迷いましたが、取り敢えず『日本書紀』巻第二(神代下)を採りました。高天原の天照大神が下界(豊葦原中國)を説明した時の情景なのですが、自然の生命力を表していると言えましょう。 名前の由来にも面白いものがあります。ゲンジホタルとかヘイケボタルという名称は、そんなに古いものではないようです。験師蛍とか、光源氏とか、火垂るとか、星垂るとかネタはいくらでもあります。 もう一つ有名なものは「蛍合戦」です。源平の争乱の戦死者の魂が蛍となって、近江石山の螢谷や山城宇治川手で戦を行うというものです。旧暦の4月20日(太陽暦6月10日)と日にちも決まっているらしい。小泉八雲は合戦後の宇治川は蛍の骸で銀河の如くと伝えられていると記しています。この他、源三位頼政の御霊が蛍となって六波羅に現れるとか、色々これに関わる伝承があったようです。他にも色々民俗的に面白いことがあるようですが、東方と関係なくなりそうなので、この辺で。 『画図百鬼夜行』の「絡新婦」風に描いてみました。『日本書紀』の漢文の書き下しは、岩波書店版のものに少し変更を加えて使用しました。 手下の虫が蛍に見えない………。 詞書き、蛍合戦の風習も入れたかったんですが、煩雑になりそうなので、別に機会にでも。 |
参考文献
荒俣宏『世界大博物図鑑』1991平凡社
柳田國男「蟷螂考」(『柳田國男全集』筑摩書房)
小泉八雲(平井呈一訳)「蛍」(『怪談・骨董』1975恒文社)
『日本書紀』(『日本古典文學大系』岩波書店)
高田衛監修『鳥山石燕 画図百鬼夜行』国書刊行会