東方百鬼表紙

生死の長き眠り未だ醒めず。水面の月、鏡の影に思い迷ふ。
　己が心を忘れ屠所の羊の歩みも我が身と為さず、鳥邊船岡の煙をも余所に見て、過ぎにし方も行方も知らず。　　　
　蓋し同じ夢の中ならば、幻想郷に隠れ無きものどもを、撰び求め言の葉を書き集め、座の右に置きて一筋に智識に恃まんとするもまた一興なり。　　　　　　　　　　　　　　　
　古の鳥山石燕が画図百鬼夜行に倣ひ、幻想郷に住まふあやかしを描かんとす。　　　　　　　　　　　　　　　　　
　公に定められし事柄の他にも、由なきこと、典拠なき言葉は避けたり。伝承当に軽んずべからず。　　　　　　　　
　　初夏、雨は霽れ月朦朧の夜、窓下に編成し謹んで石子に捧ぐ。題して画図東方百鬼夜行と曰ふと云ふ。　　　　　　　　
　　　　　　　　　　摸捫窩亭主人敬白

画帳へ

 表紙へ戻る