龍宮之使 | 緋の衣を纏ひし 遙かなる龍宮よりの使者也 颱風或は地震の 当に起らむとするや 彼の者来たリて 禍を告ぐる由 |
美しき緋の衣こと、永江衣玖嬢です。 空気が読める、珍しく常識人ぽいキャラクターですね(人じゃないですが)。対戦時の台詞が極めて普通です。とは言え、ストーリーモードでの会話内容を見ると、何だか浮世離れしているような気もしないではないです。なんだか情報の伝え方も適当ですし。まあ、そもそも浮き世から離れて存在しているので、当たり前といえばそうなのですが。 雲の中を優雅に泳ぎ、龍と人との間を取り持つ、美しき警告者です。 さて、現実の私たちは自然からの警告をきちんと受け止めることが出来ているのでしょうか? 地霊殿の委託販売が始まった訳ですが、空気を読まずに衣玖さんです。 属性としては、災害の到来を告げる龍宮の使いで、割と地味なんですが、ひらひらでぱっつんぱっつんな衣装とか、ドリルとかフィーバーなポーズとか、別の所で多彩な話題を提供してくれています。 「惣領娘さま」こと比那名居天子との関係も気になる所です。衣玖さんは一応敬語を使ってますが、平気でお灸を据えるだの、勉強しろだの言っていますし。 ところで、実在の生き物リュウグウノツカイですが、深海に棲むこの魚が、台風や地震の際に打ち上げられる事は良く知られています。魚は地震など地殻変動に敏感とも言われますが、このリュウグウノツカイの仲間は遊泳力が弱く、深海で何らかの異変があった時に浮上してしまうのでしょう。 ちょっと前の図鑑などでは、体をくねらせている絵が描かれていましたが、実際に泳ぐ際には鰭を動かすだけのようです。生きているリュウグウノツカイの映像を見たことがありますが、かなり変梃な生き物です。しかも長い。5メートルを超すものも居るそうです。立ち泳ぎのように垂直になっている姿もありました。深海に棲む近い仲間の魚(紐体類)には、フリソデウオ(振袖魚)とかアカナマダ(赤波馬駄)とかサケガシラ(鮭頭)など変わった名前の種が居て、何れも地震の前に採集されることがあるそうです。どれもひらひらの鰭やら長い条やらが附属していて、その色彩と相俟って不思議な姿をしています。 日本では、珍しいこの魚に“龍宮使”と名前を付けました。また北陸地方では“龍宮の鶏”と称したと言います。中国名は“蜃”だそうで、これは龍の一種を表す名前でもあります。大陸ではこれを水中に棲まう龍族の一員と考えていたのでしょう。 そう言えばこの人、負けた時のボロ絵でもあんまり見てくれが変わってないように見えますね。時には総ての攻撃を受け流すことが出来るらしいですから、たとえ勝負では負けても、あんまりダメージとか受けないのかも知れないですね。 淡墨での表現は難しい……。今回は後ろの斜線はない方が良かったかも。 詞書きなども余りひねった内容では無いです。ごくまっとうに。錦絵とか着物の文様とかには、雷さまを始め稲妻のモティーフもそれなりに見かけるのですが、こういった小さな単色画面に収めた良い例が見つからなくてちょっと困りました。鳥山石燕の妖怪画でも、橋姫などでは稲妻が描かれてはいるのですがね。ちとしょぼい。 雲の中、龍、電撃というと、私などはつい天空の城ラ○ュタの「龍の巣」を思い出してしまいます。どうでも良いことですが……。 地震に関して、こっちでも衣玖さんに登場して貰いました。 |
参考文献
高田衛監修『鳥山石燕 画図百鬼夜行』1992国書刊行会
荒俣宏『世界大博物図鑑』平凡社1989
ほか