ある日、 わたしは目覚めた。 何時から此処にいたのか、 どこからやってきたのか、 そもそも、どれくらいの長さ眠っていたのだろう。 わたしは、誰? |
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「吾はいい、せめて娘だけは」 「お願い、この子は助けて、どうかお慈悲を、このゆ……………」 ざざざ。 水が水が水が水が。苦しい苦しい。 ざざざざざざ。 「―――――、母さま……」 |
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路傍に塚あり。異形の神あり。 ……神も昔は人なりき。 「汝等、我が恩を忘れしか。……それでも我を殺すのか」 「矢張り……、終に此の村の民にはなれなんだか……」 「儂は真摯に約束を守った。精一杯の好意と誠実さを示した。それなのに。そんな儂を騙したのか。あの言葉も、あの約束も……、最初から皆嘘だったのか……」 「……は候ふか。古き盟約により、速やかに罷出でて御共に候へ」 「村を守る為じゃ、堪えてつかわさい」 彼方より、来たるものあり。 そは山の神、行疫神、得体の知れぬ荒き神。 ―――神、人を喰う。 いや、……違う。そう、人、人を……。 |
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かの地に五月蠅なす悪しき神あり……。 「我等は古より此の地に住まう者。如何に力を以て臨もうとも無駄なこと」 「この産土の誇りに懸けて、我等最期まで抗わん。たとえ如何なる汚名を着ることになろうとも」 影や道禄神、十三夜の……。 「可哀想だがこれも掟だ。堪忍な」 後に残るは、竃の神に若葉の魂……。 ……無類の惨虐を標榜して、外より来たり侵す者を折伏する趣旨に出たものらしく、しかもそれは……。 「情けなしとよ客僧達……。偽り非じと言いつるに。鬼神に横道無きものを……」 |
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