建築探偵 京師迷走



其之一 鞍馬貴船篇


  ★ さて幕開けは……、京師の北方を守護する鞍馬貴船といたしましょう。 ☆


 ※今回のコースと鬼神妖怪との関わりなど (東方project関連含む)

 少し変わった方向から鞍馬・貴船を見てみることにしましょう。

 1)天狗と鞍馬寺
 鞍馬寺は天狗が活躍する場として、京都では愛宕と並んで有名です。そもそも闇部山として、様々な物の怪や妖が跋扈する場所でもありました。
 鞍馬寺の信仰の中心であった毘沙門天も、夜には天狗“魔王大僧正”として顕現したと言います(大天狗の第一、愛宕太郎坊の本体も毘沙門天とされており、この点では鞍馬の大僧正=太郎坊であり、日本天狗の頂点に立つ存在であるとも言えましょう)。源義経(牛若丸)に兵法を伝授したのも鞍馬の大天狗であるとされます。

 2)鬼と毘沙門天
 鞍馬寺や貴船神社は節分の鬼との関わりも持ちます。
 節分の儀礼に大きな影響を与えたと考えられている修正会・修二会において、鬼を追い払う役を担ったのは龍天と毘沙門天でした。
 特に鞍馬の毘沙門天によって節分や節供の儀礼が始められたとの伝説があります。御伽草子の「貴船の本地」などに示されたもので、中将と鬼国の姫宮(の生まれ変わり)を鬼の襲撃から救うための方法として、鞍馬の毘沙門天が豆撒きや節供の方法を教えたというものです。姫宮は後に貴船大明神として祀られたとされます。
 要は貴船神社も鞍馬寺も、伝説では節分の鬼と深い関わりがあるということです。

 3)丑の刻参りと貴船神社
 言うまでもなく、丑の刻参りの本家?として貴船神社は大変有名です。
 今でも境内の木に藁人形(や写真など)が釘で打ち付けられていることがあるらしい……。


     *拙い写真しか無くて申し訳ないです。

 大天狗、鞍馬大僧正で知られる鞍馬山へ出発です。牛若丸伝説の中心でもありますね。

 叡山鉄道にて鞍馬線にて鞍馬駅へ。
 乗客は少なく、のんびりした感じが何とも言えない。京都精華大を越えた辺りから山を近くに感じます。

 鞍馬寺境内へ行く前に、鞍馬寺の門前町を見学します。

 右の写真は鞍馬寺への登り口から川に沿って少し上った辺りの町並み。
 古い街道の雰囲気を残しています。
鞍馬の町並み

 うだつを上げる立派な住宅は重要文化財の瀧澤家住宅。休館日で内部は見られず。間抜けだ……。

 なお、この辺りの鞍馬川では鞍馬石という質の良い石が採れるのです。
瀧澤家住宅
 ケーブル?
 いえいえ、当然足で登りますよ。

 まずは由岐神社です。鞍馬の火祭で有名な神社ですね。
 拝殿が中々素晴らしい。割拝殿と言って、中央部分が通路になっています。斜面を利用した懸崖造りが格好良い。

 豊臣秀頼の再建と伝えられています。
由岐神社
 由岐神社拝殿を上から見た所。
 山の中の雰囲気が良い。
由岐神社割拝殿
 さていよいよ鞍馬寺です。
 とは言え、建築的には特筆すべきものはありませんので、見所は寧ろ周囲の環境(伝説の舞台)と寺宝でしょうか。

 鑑真の弟子が創建したと伝えられる古刹です。京都の北の鎮護を担いました。北は玄武で玄(黒、水)や武(毘沙門天、鞍馬天狗)を司るという訳です。
 毘沙門天信仰によって栄えました。

 毘沙門天は鬼遣らいの儀礼で鬼を追う役割を担うことでも知られています。

 仏像には国宝聖観音像や毘沙門天像が所蔵されています。本堂前の灯籠も文化財です。

 因みに、鞍馬寺は現在独立系の寺院で(鞍馬弘教総本山)、お寺の説明する縁起はかなり飛んでいます。金星とか大魔王とかサナート・クラマとか何とか出てきても驚かないように。
鞍馬寺
 「鞍馬」の名称は闇部(くらぶ)からと言われるとおり、奥の院へと進むとうっそうとした山林となります。木の根が大地一面に這う風景は、いかにも天狗の住処にふさわしい。

 右は奥の院への途中にある大杉権現社。下手な写真なので上手く伝わらないかと思いますが、不思議な雰囲気があります。異界の匂いがする場所です。

 この他、牛若丸やら鬼一法眼やらにゆかりの場所や建物、記念物が沢山あります。木とか石とか典型的な伝説の地ですね。

 一山越えて、西門から貴船へと抜けます。山道もそんなに険しくないですし、鞍馬と貴船は一緒に見学するのがお勧めです。
大杉権現社



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