東方百鬼徒然袋

 夫れ和歌は其の根を心地に託け、           
 其の華を詞林に發くものなり。            
 悲しき哉。貴きは相将を兼ね、富は金錢を余せりと雖も、
骨未だ土中に腐ちざるに、名まづ世上に滅えぬ。     
 適々後世に知らるる者は、唯詩句のみ。        
 感は志に生り、詠は言に形る。是を以て、月を思ふとて、
しるべなき闇に辿れる心々を見賜ひ、又、富士の煙によそへ
て、人を恋ひ慕ふ可し。                
 天地を動かし、鬼神を感ぜしめ、人心を化すること、和歌
より宜しきは莫し。                  
 たとひ時遷り事去り、楽しび哀しび行き交ふとも、   
 いにしへを仰ぎて、今を思ひざらめかも。       
   晩秋              摸捫窩亭主人敬白

いづちとか……
化け火垂る

  壬生忠見(新古今)
深草の……
墨染桜

  上野岑雄(古今)
逢ふことも…… 月の都人

  竹取物語
墨染めの袖
墨染の袖

  慈円(千載集)
富士見妹紅 富士見妹紅

  西行(山家集)


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